Daily Words #2

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山手線はJR東の各駅停車の環状線だ。
山手線の路線の形状はどんな形だろうか?
多くの場合、円形か楕円形を想像するだろうと思われる。
実際の形状は当然円形ではない。
しかし環状線であることを踏まえると概念としての円形は正しいように思う。
これがトポロジカルな認識と呼ばれるものだ。
 
トポロジー、位相幾何学とは数学の一分野に数えられるが、実際には各分野に本質的によく似た学問や専門職が多くある。
例えば一週間分の食事を用意する時、おいしさと栄養をキープして材料や賞味期限に問題の出ない献立21食分を作るとする。
この時最もおいしく安く無駄の出ない回答を得る方法は、トポロジカルな思考を使っていると言える。
IT業界でもトポロジー最適化という言葉が使われる。
これは主にLAN構築の際に無駄がなくセキュリティー上に穴も出ないラインの構築のための思考だ。
当然幾何学の分野であるのだから、幾何学的な研究も進んでいる。
そして最も大きな規模で扱っていると思われるのが宇宙学だ。
宇宙の状態、形状、概念を説明するためにトポロジーは利用されている。
数学的な未解決問題として有名だったポアンカレ予想はトポロジーに関する問題だ。
これは2003年にグレゴリー・ペレルマン氏が証明して解決した。
 
最も身近な例としてはドラゴンクエスト3のマップについてだ。
ドラクエのマップは世界地図を模したデザインで、正距円筒図法やメルカルト図法のように大陸や島が並ぶ。
そして船や飛空艇を手に入れて北限を超えると南限から現われ、東西も同様に画面の端を超えると反対の画面から再び登場する仕組みになっている。
この頃のファミコン的な世界、マリオでも似たような左右がつながった空間設計がよく見られた。
 
ではドラクエの世界の地球はどのような形だろうか?
目に見えているように平面だろうか?
地球のように球体だろうか?
これは実際に考えてみると面白いのだが、正解はドーナツ型の形状だ。
直感に反するかもしれない。
しかし四方につながった世界を立体図で考えるとドーナツ型以外にあり得ないのだ。
これもトポロジーの一つで、形の長さや角度の概念はほとんど使用せず、形の構造を本質としてカテゴライズする学問だ。
もっと身近なものとしてはグーグルマップのルート案内の概念もトポロジーの最適化の一部がリンクしている。
 
形の本質は辺の長さや角度ではなくその構造である、とするのは哲学の構造主義ともよく似ている。
数学界の構造主義と呼ぶべきか、むしろ哲学界のトポロジーが構造主義と呼ばれる未来の可能性が高い。
なぜならトポロジーは遠くない未来に宇宙の構造を説明するための重要な武器として活躍が期待されるからだ。
 
聞きなれない学問も紐解けば身近に存在している。
知らないからといって放っておくのは損かもしれない。