One day albino snake
“ある日のアルビノ”

2020
Japan
Studio Rec:Digital Cinemagraphy(Cinema Scope)
RED COMODO 6K with EF
Resolution:4K95.94FPS – 6K47.95FPS

『「踏まれたらおしまいですね」と、そのうち蛇が言い、それからどろりと溶けて形を失った。』
「蛇を踏む」川上弘美著より


蛇のモチーフを拒む理由は探してもない。歴史的にも生物学的にも宗教的にも哲学的にも芸術的にもしっかりとした個性を放つ存在だ。今回縁あって撮影させてもらった。表皮の感触といい所作仕草といい、蛇は存外カワイイ。半日もないうちにすっかり魅了されてしまった。飼うとなれば届け出や家探しなどそれなりに手間はあるらしい。

生き物はだいたい全部が神秘的である。アルビノの蛇に神秘を見るように、元来は我々個々にも同程度の神秘はあると思う。見慣れてくるとつい忘れてしまう。本当はくだらないのに、本当は素晴らしいのに、思い出せなくなる。普段は全く見ない蛇に対峙することで内側から非日常を見た気がした。

ある瞬間に月や星空を見上げたり、眼下に広がる風景に想いを馳せたり、ふとした瞬間に自分自身や外界をリロードする。その刹那に認識が溶け出し入り組むような不思議な感覚。意識しないことが多いが、誰でも日常的に不定期で繰り返す仕草だ。読み直すたびに元の世界に帰ってくるのだが、ある日もしかしたら、我に返ると全く同じなのに全く違う世界に行ってしまうかもしれない。

この素晴らしく愛らしいアルビノの蛇には、そういった意味での危うさを警戒した方が身のためだろう。